バイオリン、ビオラ、チェロといった弦楽器奏者の、クラシック以外のジャンルの演奏を聴いていると、
「めっちゃ上手いんだけど何かしっくりこないな」
「なんかノリがちょっと違うかな…」
と感じたことはありませんか?
もしかしたらその理由は「ビブラートのかけ方」にあるかもしれません。
私はクラシックバイオリンのレッスンを受けた上で、ジャズやポップスなど非クラシックプレイヤーへ移行しました。クラシックと非クラシック両方の演奏経験から「非クラシックなジャンルにおけるビブラートのかけ方」についてご紹介します。
この記事の動画版もありますので、聞き流したい人はこちらからどうぞ。
“クラシック弾き”を他ジャンルに持ち込むと、ダサくなる
ワークショップやジャムセッションなど、様々なイベントを通じて色々な方の演奏を聴いて気づいたことがあります。
クラシック以外のジャンルをカッコよく弾く人と、そうでない人がいる
これは楽器の上手下手とは全く別次元のお話。音程完璧でテクニックもすごい人でも”なんかダサいな”とか、
音程が少し雑だけど”めちゃくちゃ味がある”という人も、たくさん見てきました。
その違いの理由は何なのか。それは、、、
「クラシック弾き」を他のジャンルに持ち込んでしまうと、ダサくなる。
“クラシック弾き”には様々な要素がありますが、今回はその中でも最重要な「ビブラート」に焦点を当てていきます。
ビブラートが多すぎると、ダサい
クラシックはビブラートの量が異常に多い「特殊」な音楽。
なぜなら、クラシックは基本的に”生音”勝負の音楽だからです。
アンプで音の増幅を行わず、人間と楽器の力だけで広いホールを響かせなければなりません。必然的に、ビブラートによって音圧や表情の変化をつける必要があります。クラシックをやる上では必須の技術です。
一方、その他のジャンルにおけるビブラートの使用頻度はどうでしょうか。
ロックやポップス、ジャズなど他のジャンルにおいては、ビブラートの登場頻度はクラシックほど高くありません。ビブラートではなく、それぞれのジャンルに合った装飾テクニックが使われています。
例えばロックならギターのチョーキングやスライドやハンマリング、ポップスならしゃくり上げやコブシ、北欧音楽なら高速トリル等。
それぞれのジャンルに合う装飾テクニックを使うからこそ、カッコよくなります。もちろん、クラシックではビブラートを使うことで表情豊かになり、美しい響きを創ることができます。
非クラシックなジャンルで、クラシックを演奏する時と同じ感覚でビブラートをかけてしまうと、やっぱり合わないんです。オペラ歌手がビブラートをガンガンに効かせて、椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」を歌ったらネタにしか聴こえないですよね。
ビブラート最適化への2STEP
頭ではわかっていても、長年クラシックで染み付いたビブラートグセはそう簡単には抜けません。かくいう私がそうでした。
では具体的に何をすれば、非クラシックなジャンルでもカッコ良く弾けるようになるのか。私が行ったことは、
①禁ビブ練習
②ビブラートウォッチング
この2つです。
①ビブラートグセを除去する「禁ビブ練習」
まずやるべきことは、リセットボタンを押すことです。
レッスンの課題曲、今度ライブや発表会でやる曲、ジャンル問わず何でもいいので、練習するときに最低2周、ビブラートをまったくかけずに曲を通してみましょう。
というかクラシックでも、練習するときはまずノンビブラートでやりますよね?その方が音程を正確にとるためのトレーニングになるからです。ビブラートをかけると音程が多少外れても、うまいこと揉み消せるので、練習ギライな私はよくやっていました。(いわゆる「ビビラート」ってやつ)
しかしコレばっかりやっていると音程取れるようにならないし、同業者には一瞬でバレます。。。
また、禁ビブ練習には「右手の動きが良くなる」というラッキーな副産物があります。ノンビブラートなので左手で表情を一切つけられません。すると必然的に右手、つまり弓のスピードで表情を付けたくなります。禁ビブを続けていくと、弓のコントロールスキルが向上し、ビブラートなんかに頼らずとも表情豊かな演奏ができるようになっちゃうんです。
というわけで、禁ビブ練習には「ビブラートグセを除去する」「右手が上手くなる」というメリットがあります。
②観察してマネする「ビブラートウォッチング」
普段音楽を聴いたり見たりする時に、どんなビブラートをしているか”だけ”に注目することです。
「このイントロ泣けるよな〜」「このメロディ神だ〜」というあなたの豊かな感受性は、いったんゴミ箱に捨ててください。
弾きたいジャンルのお手本プレーヤーを見つけ、その人の演奏のビブラート”だけ”を観察し、真似してみましょう。
バイオリンでジャズを弾きたいなら、ジャズバイオリニストの演奏を聴いて(できれば見て)、
・いつ、かけているか(発音した直後?ロングトーンの終わりにチョロっと?)
・幅、速さ
・どんな時に激しくかけているか
・どんな時にノンビブラートか
という点をじっくりチェックします。
ジャンルごとにある程度共通点はありますが、同じジャンル内でも、アーティストによって全然違います。
ぜひウォッチングを続けて、ご自分の好みのアーティストのビブラートを真似してみましょう。
私が今まで一番ウォッチングしたアーティストは、バイオリニスト「ジェレミーキッテル」です。彼はジャズ、ケルト、ブルーグラスなど、多様なジャンルを華麗に弾きこなすハイパーマルチジャンルスーパーアルティメットバイオリニストです。彼のビブラートを研究する上で一番おすすめの動画はコレ。
サマータイムというジャズスタンダード曲ですが、ちょっとロックなテイストも垣間見える、めちゃめちゃクールな演奏ですので、毎日10回はみてください。
また「私のオススメアーティスト」もぜひチェックいただき、ビブラートウォッチングしてみてください!
― CATEGORY ―
おすすめアーティスト
https://melpostrings.net/category/discovery/
まとめ&補足
●クラシック出身の弦楽器奏者が、非クラシックなジャンルでカッコ良く弾くためのポイントは「クラシックのビブラートを持ち込まないこと」
●そのための具体的なアクションプランは
①禁ビブ練習
②ビブラートウォッチング
(ビブラートグセを取り除く→お手本プレーヤーを見つけ→マネする)
補足
実際の本番演奏で「ビブラートを全く使うな!」と言いたいわけではありません。
全てノンビブラートで弾くと、やっぱり抑揚が少なく平坦に聴こえてしまいがち。
「ここぞという時」に狙ってビブラートを使うと、めっちゃカッコよくなるんです。隠し味として使うイメージ。
逆にここぞという時にノンビブラートを使うことも、テクニックの1つです。
ビブラートとノンビブラート、この2つの格差が、音に表情を作ります。
ビブラートを手グセにしてはダメ、ゼッタイ。しっかり狙って隠し味として使いこなし、表現の幅を広げていきましょう!