「クラシックをずっとやってきたけど、それ以外のジャンルにも興味ある。」
「アドリブが弾けるようになりたい」
「でも、何をすればいいのかわからない」
「仕事に子育てにバイトにオケに、忙しい」
そんなバイオリン、ビオラ、チェロ奏者の方に、コスパ最強の「耳コピ練習法」をご紹介します。
クラシック出身でもできるようになります
弦楽器奏者の大半は、クラシックの教育を受けてきた方だと思います。かくいう私も、小学校2年生からバイオリンを始めガッツリクラシックのレッスンを受けて来ました。
クラシック出身だと、楽譜を読むのはわりと得意。だけど簡単なメロディとコードしか書いていない、いわゆる「コード譜」を渡されても、何をどう弾いたらいいのかわからない。バンドメンバーから「ここはAマイナーで良い感じにアドリブでよろしく!」と言われるとお腹が痛くなって冷や汗。
そんな時「オッケ〜(キリッ)」と返事してみたい!アドリブでカッコいいソロを弾きたい!ジャムセッションとか行っていろんな人と音楽を楽しみたい!
そんな方に超オススメの「練習方法」「頭の使い方」をご紹介していきます。
この記事の動画版もありますので、聞き流したい人はこちらからどうぞ。
アドリブ習得のポイントは「耳コピ」後に何をするか
「耳コピ(トランスクライブ)はしたほうがいい」とよく聞きますよね。それは、ぶっちゃけ正しいと思います
ただ、耳コピってめちゃくちゃ大変ですよね。
私自身、今までジャズやポップス、ロックやアイリッシュなど、様々なジャンルの曲を耳コピしてきましたが、正直かなりめんどくさいです。初めの頃はたった2小節を楽譜にするのに1時間くらいかかったりしました。再生速度を遅くするアプリとかを駆使して、何十回も同じ部分を繰り返し聴いていました。
残念ながら、この「耳コピ」作業自体をカンタンにできる方法は私にはわかりません。今回の焦点はそこではなく、「耳コピ」作業の効果を最大化する方法です。
せっかく頑張って耳コピしたんだから、できる限り”ハイリターン”が欲しいですよね?
そのために重要なのは、耳コピ後の「分析」「楽器を使った練習」です。
コスパ最強の「耳コピ練習法」
①「手」を使って譜面に起こそう(or「金」で買おう)
②「耳」を使ってながら聴き
③「頭」を使って分析しよう
④「楽器」を使ってパクる練習
①手を使って譜面に起こそう(or「金」で買おう)
音を譜面に書き出すと、音が可視化される
めちゃくちゃカッコいいなと思ったフレーズでも、譜面にしてみると意外とシンプルなことしかやってないパターン、よくあります。「これ、音階をただかけあがってるだけだったのか」「同じリズムを3回繰り返してるだけやん」のように、聴くだけでは気づかなかった”カラクリ”に気付くことができます。
耳コピに時間ないなら、アドリブ譜を買っちゃえ
世の中には一流のアーティストのカッコいいアドリブソロを譜面に起こしてまとめた「アドリブフレーズ集」がたくさん売ってます。
私はコレを買って弾きまくりました。
時間は金で買いましょう。もちろん、自分で譜面に書き起こした方が耳が鍛えられて良いのですが、圧倒的に面倒くさい「耳コピ作業の壁」の前で諦めてしまって先に進まないのは何の意味もありません。
こんな壁はお金で解決して、さっさと先に進んでしまいましょう。
本当に大切なのは「耳コピ作業」そのものではなく、「耳コピした後に何をするか」です。
つまり、この後ご紹介する「分析」や「楽器を使った練習」の方が100倍大事です。
自分で書き起こしたのか、それとも市販のアドリブフレーズ集めを買ったのか。そんなことはどうでもいいです。目的は、「音を可視化すること」です。
②耳を使ってながら聴き
譜面に起こしたオタマジャクシは、音を完璧には再現できません。譜面で表現しきれない「息遣い」「タイミング」「装飾音」などは、耳で聴いて覚えましょう。暗譜できるくらい、もしくは鼻歌で歌えるくらい、繰り返し聴きましょう。
この「聴く」という工程では、頭を使わなくて大丈夫です。通勤中や洗濯物を干している時、食器を洗っている時など、何かしながらボケーっと聴き流しましょう。聴き流しているだけでも、回数を重ねれば案外覚えるものです。
間違っても、楽器で練習できる貴重な時間に「聴く」という作業はしないでください。「聴く」はスキマ時間にやるものです。せっかく練習時間が作れたなら、その貴重な時間は「弾く」に充ててください。
③頭を使って分析しよう
フレーズを「タテ」と「ヨコ」に分けてフレーズを見てみましょう。
「タテ」とは“どのようなリズムパターンになっているか”
「ヨコ」とは“何の音を選んでいるのか”
「タテを見る」とは、
・ここは三連符の3つ目を休符にしてるな
・ロングトーンの後に細かい音を2つ弾いてるな
といったことに気付くということです。
「ヨコを見る」とは、
・3度ずつ駆け上がっているな
・なるほどここで1オクターブの跳躍を入れるのか
といったことに気付くことです。
そういう「気づき」を、譜面に赤ペンでメモりましょう。この赤ペンメモが、次の「楽器を使う」コーナーで重要になります。
④楽器を使ってパクる練習
頭を使った分析工程で出来上がった赤ペンメモを見ながら、そのメモ内容を「自分なりにアレンジ」してみましょう。
例えば、「三連符の3つ目をを休符にしている」という気づき(メモ)があった場合、その「三連符の3つ目をを休符にする」縛りで曲に合わせてアドリブを弾いてみます。
このように特定のリズムパターンしか使っちゃダメ、という状況で弾くことを繰り返すにより、そのリズムパターンが「自分の持ちネタ」になります。
同じ要領で、今度はヨコに関するメモに着目します。例えば「3度ずつ駆け上がる」縛りでアドリブをとってみます。
このようにして、自分の中のフレーズの引き出し(=持ちネタ)を少しずつ増やしていくと、”何を弾いていいかわからない”状態から卒業できます。
ちなみに「完コピ」はおすすめしません。完コピをしてしまうと、タテとヨコがガッチリ紐づいた状態で体にインプットされてしまうので、その曲以外で生かすことができません。タテとヨコを分離した上でネタを増やしていくことで、汎用性の高い、質の良い「持ちネタ」が蓄積されます。
まとめ&補足
アドリブ習得のためのコスパ最強の練習方法「4step」とは、
①プロの演奏を可視化する(耳コピしても、買ってもどちらでもOK。ここはサクっと済ますことが大事)
②スキマ時間で耳に覚えさせる
③譜面に「気づき」を赤ペンメモする(タテとヨコを分離して)
④メモ内容を自分流にアレンジして弾く
なかでも最重要なのは③④です。
①②は単なる準備運動です。短期間でチカラをつけるには③④をどれだけ大量にできるか、にかかっています。
何度も言いますが、大切なのは耳コピの後。一流のミュージシャンの演奏から、面白いと思ったことを書き留め、それを自分のものとして使えるようにすることが、コストパフォーマンスを高めるコツです。
余談ですが、オススメのビジネス本をご紹介します。
日本一生産性の高い精神科医「樺沢紫苑」先生が書かれた「アウトプット大全」です。
ビジネスマン向けに書かれた本ですが、楽器がうまくなりたい人全員に読んで欲しい一冊です。
この本の結論をざっくり言ってしまうと、
- 脳の構造的に、人はアウトプットしないとガンガン忘れる
- どれだけ大量にインプットしても、アウトプットしなければ意味がない
- 「インプット:アウトプット=3:7」が理想
これをアドリブ習得に当てはめると、
どれだけ大量に耳コピしようが、それを「分析して楽器で鳴らす」ことをしないと意味がない
ということです。
個人的には、おすすめのアウトプット方法は「他の人に聴かせること」。
YouTubeで弾いてみたを投稿してみたり、ジャムセッションに参加してみたり、発表会に出てみたり、など。
このように目的を設定すると、練習の質は爆上がりします。
このコスパ最強の耳コピ練習法は、私が実際に試した方法のうち最も効果があったと感じたものです。
是非、アドリブスキルを手に入れて、ジャズやロック、ポップスやアイリッシュなど、非クラシックな世界を楽しみましょう!