HOME/コラム/バイオリン奏者がジャムセッションデビューする方法
コラム

バイオリン奏者がジャムセッションデビューする方法

初対面の人同士でもいきなり合奏が楽しめるジャムセッション。
興味はあるけど「クラシック畑の私には無理だ」と諦めていませんか?諦めるのはまだ早いです!

クラシック経験があるということは、楽器を扱う技術は持っていると思うので、楽器初心者の方に比べれば断然有利です。その技術を生かしながら、あとは思考モードをちょっと変えて慣れるだけ。そう。クラシック奏者にとって「ジャムセッション」は、案外手の届くところにあるのです。

かく言う私も最初はゴリゴリのクラシックバイオリンを習っていました。ジャズへの興味からジャムセッションに100回以上参加し、今ではセッションを主催する側にもなっています。

今回は弦楽器奏者の皆様に、ジャムセッションの仕組み、楽しさ、未経験者がセッションデビューするために必要なこと、バイオリンなどの弦楽器でも参加できるのか?などについて解説し、あなたのセッションデビューを後押しします!押しまくります!突進します!

ジャムセッションとは?

2021年3月28日に行われた、バイオリンセッションの様子

ジャムセッションでは、初めまして〜な人同士が「〇〇(曲名)やりましょう」と曲を決めて、その場で合奏します。自分の名前が呼ばれたらステージに行き、ステージ上で「何の曲やりましょうか」と話し合い、曲が決まったら1分後に合奏スタートです。

やばいっすよね。クラシックでは考えられませんよね。クラシックの弦楽四重奏をやろう!となれば、数ヶ月前に曲を決め、各々が練習を重ね準備万端な状態で集まって合わせてみて、修正を重ねて作り上げていく。

このように長い時間をかけて仲間と音楽を作り上げるクラシックアンサンブルはとても楽しいです。僕も大大大好きです。なんだけど、

時間がねぇんだよ。。

仕事にバイトに、結婚に子育てに、大人になるといろいろ忙しいですよね。
ライフイベントを機に楽器から離れてしまうクラシック奏者はとても多いと思います。モッタイナイ。

人と合奏したい。だけどもっと手軽な方法はないかな…。
そんな願いを叶えるのが、ジャムセッションです。

ジャムセッションの種類

ジャムセッションにも、様々なジャンルがあります。
ジャズ、ファンク、R&B、ポップス、アイリッシュなど。
珍しいのだとブルーグラス、ラテン、北欧トラッド、アニソン、ゲーム音楽とかもあったりします。
今回は、おそらく一番数多く行われているだろう「ジャズ」のジャムセッションを例に解説します。

また、セッションによってレベルの差もあります。
全員プロかよって人たちが集まる鬼ハイレベルセッションもありますし、初心者歓迎セッションもたくさんあります。間違って鬼レベルセッションに初心者が入っちゃうと、けっこうツラいです。
「初心者歓迎セッション」の方が圧倒的に数が多いので、これを掲げているセッションに行っておけば間違い無いです。

場所、参加費用、所要時間

多くは、ライブバー的なところでやります。だいたいそんなに広くなく、キャパ10人〜30人くらいのお店が多いです。中には、ジャムセッション専用のお店なんかもあります。この記事の最後に、私が行ったことのある、初心者にオススメのお店(都内)を掲載しますので、参考にしてみてください。

大体どこもワンドリンクオーダーは必須で、参加費と合わせて2000〜4000円くらいになることが多いです。

時間は2〜3時間くらい。途中休憩が何回かあり、お客さん同士で会話したり、次呼ばれたらなにやろっかな〜とか考えたりしてます。

セッションホストとは

そのセッション会の進行役です。どのセッションにも必ず1人はいます。その名の通りホストとしてゲストをもてなす役割。
参加者の演奏順を決めたり、演奏が破綻しないように要所でサポート演奏に回ったり、初心者の方のケアをしたり、時には参加者に演奏のフィードバックをしてくれたり等、いろいろやってくれる人です。
セッションの雰囲気は、このホストミュージシャンによって変わります。「○○さんがセッションホストだから行きたい」という人も多いです。

「初心者で、”枯葉”しかできないんですが、、」といったご要望などあれば、まずセッションホストに相談しましょう。なんとかしてくれます。

どんな曲をやるのか

初対面の人でもすぐに合わせられるように、みんなが知ってるような曲をやります。
つまり、そのジャンルの「スタンダード曲」をやります。
ジャズやポップスなど、ジャムセッションが盛んに行われるようなジャンルにおいては、スタンダード曲集(通称スタ本)というものがあります。
ジャズのスタンダード本はコレ。
ジャズ・スタンダード・バイブル~セッションに役立つ不朽の227曲」※通称「黒本」
ジャムセッションにいくと、ほぼ全員これを持っています。

スタンダード本に載っていないけど、やりたい曲がある!という場合は、自分で他のメンバーの分の譜面を準備する必要があります。

バイオリンセッションとは?

※上と同じ動画です。2021年3月28日のバイオリンセッションの模様。

弦楽器奏者に圧倒的にオススメなのが、この「バイオリンセッション」。
ジャズバイオリニストの北床宗太郎さんが主催している、弦楽器奏者のためのジャムセッションイベント。
都内にて月イチで定期開催してくれています。私もほぼ毎回参加しています。

セッションの開催予定情報は、こちらのツイッターアカウント「ジャズバイオリン ディレクション」で発信されますので、フォローしてみてください。

バイオリンセッションという名前ですが、バイオリンだけではなくヴィオラやチェロも大歓迎のようです。

場所

西武池袋線「江古田」駅徒歩5分の、おしゃれなパン屋さん「ヴィエイユ bakerycafe&gallery」でやることが多いです。

日時

どこかの日曜日、18:30スタートのパターンが多いです。

セッションホスト

・バイオリンの北床宗太郎さん
・ピアノやベースなど、北床さんが毎回素晴らしい相棒ミュージシャンを連れてきてくれます。

セッション初心者(初めて)の弦楽器奏者は、まずこの「バイオリンセッション」に行くべき

私は100回以上さまざまなお店のセッションに参加してきましたが、バイオリン、ヴィオラ、チェロなどの弦楽器奏者のかたにオススメしたいセッションランキングぶっちぎり第一位は、この「バイオリンセッション」です。

理由その1「弦楽器仲間が見つかる」

そもそも弦楽器は、他の楽器に比べて演奏人口は少ないですが、さらにその中でもジャズやポップスなど非クラシックなジャンル好きの弦楽器奏者となると、周りにほぼいないですよね。
でもココに来れば、アドリブ弾いたりジャズやポップスを楽しみたいという相当レアな弦人種に出会えます。

私が所属するジャズ専門弦楽四重奏団「阿佐ヶ谷ファンキーボーイズ」を結成したのは、このバイオリンセッションでの出会いがきっかけでした。

理由その2「初心者からプロ奏者まで、さまざまなレベルの奏者が満足できる環境」

初心者セッションだと、プロの人には物足りない。玄人セッションだと、初心者はオシッコもらす。
セッションごとにターゲットは違うので、しょうがないことです。
しかしバイオリンセッションでは、様々なスキルレベルの奏者が満足できる内容なんです。
それを可能にしているのが、セッションホスト「北床宗太郎」氏の絶妙な采配。

セッション初めての人は見学も大歓迎。混ざれそうだったら混ざってみる?と声をかけてくれたり。
ジャズ初心者のアドリブアレルギーを克服させるために、数小節だけ参加できる「アドリブリレー」などの小イベントをやってくれたり。
一方、セミプロ系奏者によるアドリブのガチンコバトルも繰り広げられたりします。

何より、ホストの北床さんから、演奏に対する簡単なフィードバックがあるのがとても有益です。
ジャムセッションって、「途中なんかよくわからなくなって一瞬崩壊したっぽいけど、なぜか何とかなった」みたいなことがよくあります。
そんな時、北床さんは「あの時何が起こっていたからこうなった。次はもっとこうすると良い」「あのポイントが素晴らしかった」みたいなアドバイスをよくくれるので、めちゃくちゃ勉強になります。

先日のバイオリンセッション(2021年3月28日)は、こんな回でした。

参加メンバー

セッションホスト:北床宗太郎(ヴァイオリン)、柳隼一(ピアノ)
参加者:バイオリン8名(うち3名は見学)

やった曲

1.East Of The Sun
2.How High The Moon
3.It Could Happen to You
4.All of Me
5.Gのペンタトニックスケールだけで、アドリブリレーしてみようのコーナー(全員参加)
6.Moanin
7.Fly Me To The Moon
8.Alone Together
9.The Girl from Ipanema
10.On The Sunny Side Of The Street

Q&A

演奏する時、楽譜は見ていいの?

見て全然OKです。参加者は「黒本(ジャズスタンダード曲集)」を見ながら弾きます。

黒本(スタンダード本)では、このような「コード譜」形式で書いてあります。

・1曲1ページ
・書いてあるのは「メロディライン」「コード」
・クラシックのようにパート毎に違う楽譜を見るのではなく、全員が同じ「コード譜」を見る
・ト音記号表記のみ

なぜ初対面同士でも演奏が成り立つの?

ジャズでは、演奏の型(フォーマット)があるからです。どんな楽器の人でも、このフォーマットさえ知っていれば、参加可能です。

ジャズのフォーマット(進行の”型”)

①イントロ
②テーマ
③アドリブソロ
④テーマ
⑤エンディング

ジャズのほぼ全ての演奏がこのフォーマットの通りに進んでいきます。
アドリブ(即興)要素の強いジャズは「自由」なイメージですが、実はこういう決まった型に合わせて弾いているからこそ、即時的な臨機応変なアンサンブルが可能なのです。

初心者の方は「アドリブができないので、テーマだけ弾きたいです」といった参加の仕方でも全然OKです。
セッションホストに一声かければ、調整してくれます。

どうやって曲を決めてるの?

その時の演奏メンバーで話し合って決めます。

Vn

〇〇をやりたいです

ピアノ

おっけー^^

Va

え、ちょまって!!わたしソレ無理かも…

Vn

じゃあXXはどうです?

Va

あ、それならなんとか!私この曲アドリブ自信ないからテーマだけ弾いていいですか?

みたいな流れで決まります。
全員が全員「何にしますー?まかせますー」的なスタンスだとなかなか決まらなくてグダグダになるので、前もってやりたい曲を決めておくと良いでしょう。

マイクとか必要?生音で大丈夫?

【バイオリンセッションの場合】
マイク不要。生音でOK。

【その他の一般的なジャムセッションの場合】
①ジャズ・アイリッシュ系→生音でOK。
②R&B/ファンク/ポップス/ロック系→マイク必須

②のようなセッションでは、ドラム、エレキギター、サックスなど大音量の楽器と一緒にやる場合が多いので、バイオリン,ヴィオラ,チェロ等の弦楽器の生音は、彼らにかき消されます。マイクを使ってお店のアンプに繋ぐか、ミニアンプ持ってたら持参しましょう。

私が使っているマイクは、コレです。チンアナゴ風マイク。
かれこれ5年くらいは使い続けていて、大満足です。セッションだけでなく、ライブでも大活躍してます。バイオリンだけでなくヴィオラやチェロ用もあります。

また、エレキバイオリンという選択肢も相当アリです。
ファンクやR&Bセッションでは、エレキヴァイオリンにエフェクターをつないでアンプから音を出すと、めちゃカッコいいです。

ちなみに私が使っているエレキヴァイオリンはコレ
「NS Design」というブランドの「WAV4」シリーズです。

まず、コレをやってみよう〜具体的なアクション〜

事前準備

まずは黒本を買いましょう

絶対買っておいた方がいいです。他にもスタンダード本はありますが、2021年の今現在、黒本が圧倒的なシェアを誇っています。

この3曲だけは覚えておくと便利

1.Autumn Leaves

2.Fly Me To The Moon

3.All Of Me

黒本に載っている曲のなかでも、特によくやる3曲です。セッションで必ず誰かがやります。ですので、この3曲の「テーマ」だけは弾けるようになっておくと、セッションに混ざれます。

現場へ行ってみよう

まずはバイオリンセッションを「見学」

未経験なのにいきなり弾くのは、さすがにキンチョーしますよね。。。
そんなときは見学にいきましょう♪見学も歓迎してくれます。
あ、見学とはいえ、見てるときっと弾きたくなります。なので楽器は念のため持参することをおすすめします!!

セッションの開催予定情報は、こちらのツイッターアカウント「ジャズバイオリン ディレクション」で発信されますので、フォローしてみてください。

バイオリンセッションという名前ですが、バイオリンだけではなくヴィオラやチェロも大歓迎のようです。

「ミニポ」に参加してみる

私が主催している、弦楽器奏者のための弾き合い会「ミニポ」。

楽器仲間とゆる〜く楽しむ【弦楽器アンサンブル会】仲間と弦楽四重奏を弾く場が欲しい。バイオリンで合奏したい。そんなアマチュア演奏家のための、弦楽器アンサンブルの会です。飲み食いしながら、カジュアルに音楽を楽しみましょう。...

クラシックやジャズなど、様々なジャンルごちゃまぜで、集まったみんなでワイワイ飲み食いしながらアンサンブルするイベントですので、是非お気軽にご参加ください。

まとめ

ジャムセッションに参加するメリット

・音楽仲間が増える
・演奏機会が増えるので楽器が上達する
・忙しい中でもサクッと合奏が楽しめる

セッション未経験者は、まずコレをやってみよう

・黒本を買う
・「バイオリンセッション」に行ってみる
・「ミニポ」に行ってみる

以上、バイオリン,ヴィオラ,チェロなどの弦楽器プレーヤーのみなさん。
ぜひ最初の一歩を踏み出してみましょう!

おまけ「未経験者にオススメのジャムセッションのお店3選」

私が実際に行ったことのあるお店の中から3つ、自信をもっておすすめします。
※圧倒的オススメの「バイオリンセッション」は説明済みのため除きます。

西荻窪 COCOPALM

ほどよくレトロであったかい雰囲気のお店。
私はココでジャムセッションデビューしました。
特に、ベーシスト多田和弘さんが主催している 「初心者歓迎!≪超ゆるジャズセッション≫ 」ってやつがオススメです。まじで超優しいです。
弦楽器奏者はマイクなしの生音で大丈夫です。
https://www.livecocopalm.net/index.html

高田馬場 Sunny Side

堅苦しい感じとかが一切ない、めちゃくちゃアットホームな店内。
緊張もほぐれます。
個人的には、ベーシスト野々口毅さんの「初心者ジャムセッション」がおすすめ。
弦楽器奏者はマイクなしの生音で大丈夫です。
http://www.sunny-side.jp/index.html

池袋 Hot Pepper

THE老舗のジャズバーで渋い店内ですが、場の雰囲気はとってもあったかい。
ボーカリストの青木穂波さんが主催するセッションはめちゃくちゃ楽しい。だって盛り上げ上手なんですもん。
弦楽器奏者はマイクなしの生音で大丈夫です。
http://jazzhotpepper.com/index.html

※セッションのレベルや雰囲気は、お店によってというよりもホストミュージシャンによって変わります。

この記事を書いた人
ほんだかづき
ほんだかづき
1990年生まれ。脱クラシックしたヴァイオリン/ピアノ弾き。ジャズ専門ノープラン系弦楽四重奏団「阿佐ヶ谷ファンキーボーイズ」1stヴァイオリン担当。YouTubeチャンネル「ピアノ麻酔」運営。"弦楽器=クラシック"という世間のイメージをブチ壊すために、都内を中心としたワークショップ運営や演奏、当サイトでの情報発信など日々活動中。