バイオリン、ヴィオラ、チェロなどの弦楽器奏者が、ポップスやジャズを演奏しているのを見て、
音程も完璧だし音もめっっっちゃキレイなんだが、何か違和感が…
なんかノリが違う気がするなぁ…
どうやったら葉加瀬太郎さんみたいにノリの良さが出せるんだろう…
こんなことを感じたことはありませんか?
そのモヤモヤの原因は、もしかしたら「スウィングできていないこと」かもしれません。
クラシックのレッスンを受けていると「スウィング」については一切触れられません。クラシックでは必要ないからです。
しかしクラシックを離れてポップスの世界に足を踏み入れると、この「スウィング」感覚は必須です。なぜなら、ポップスの人たちは当たり前のようにスウィングできるからです。
逆にスウィングできれば、クラシック以外の演奏者から「一緒に演奏してみたい」と思ってもらえる可能性が高まる=つまりモテます(社会的/音楽的に)。弦楽器奏者としては、希少性の高い人になれます。
そこで今回は、クラシック奏者がスウィングを習得するメリットや、習得するためのプチエクササイズなどをご紹介します。ポップスシーンでもノリ良く演奏に混ざるためのお役に立てれば幸いです。
スウィングとイーブンの違い
まずスウィングとは何でしょうか。
この世の音楽を”リズム”という観点で2分すると、「イーブン」と「スウィング」です。
違いは、1拍の分割方法です。
・1拍を均等に2分割するのが「イーブン」
・1拍を不均等に2分割するのが「スウィング」
イーブンの例
スウィングの例
厳密には「スウィング=3分割」ではない
上記の表を見ると、4分音符を「2:1」に分けている=つまり”1拍を3連符としてとらえればいいんでしょ?”
と思われるかもしれませんが、すみません、ちょっと違います。半分正解、半分不正解です。
「2:1」という比率は、ジャンルや曲によって変わります。
「2.2:0.8」になるときもあれば「1.8:1.2」になる曲もあります。だいたい「2:1」前後です。
つまりスウィングとは、
前が長く、後ろが短い。ただしその比率は流動的。
スウィングのリズムは、楽譜には書かれない
スウィングする曲の場合、その分割比率は楽譜には書かれません。
比率をいちいち楽譜に書いてしまうと、譜面が複雑になってしまい見にくいからです。
スウィングだろうがイーブンだろうが、”全てイーブンの表記”で書かれます。
※上記の表ではわかりやすくお伝えするためにあえて3連符で表現しています。
したがって、
「スウィングで弾いてくれ」と言われたら、イーブン表記の楽譜を”自分でスウィングに変換して”音を出すことになります。
弦楽器奏者がスウィングできるようになるとモテる
「モテる」=「一緒に演奏したいと思われる」
合コンの相手を見定めるとき、どんなポイントを見ますか?
顔、身長、声、年収、話し方、気配り力…
同じように、初めてあなたの演奏を聞いた/見たリスナーやミュージシャンは、あなたの音楽的スキルを主に2つの軸であなたを分析しちゃってます。
①音程…ピッチは正確か
②リズム…その曲のリズムに合っているか
バイオリン、ヴィオラ、チェロなどの弦楽器は、クラシックの教育を受けてきた方が大半ですので、「①音程」に関しては特に頑張らなくてもわりと高得点をゲットでき、おそらく努力不要です。
問題は「②リズム」です。弦楽器奏者は、スウィングをはじめポップスで多用される様々なリズムでの経験が足りません。
逆にスウィングできるようになりさえすれば、「音程もリズムも高得点」という、ハイスペック弦人材になれます。
モテる理由その1「希少性が高い」
ポップスのノリが備わっている、つまり「イーブンにもスウィングにも対応できる」弦楽器奏者は、現状相当レア。
そんなレア人材を、バンドメンバーを探している人やボーカリストは放っておきません。
「ここで逃したら次いつ会えるかわからない」「出会えてラッキー!」「繋がっておきたい!」と思ってくれるハズ。
モテる理由その2「”汎用性高くて便利”認定される」
アーティストがライブやイベントの選曲をする際、イーブンとスウィングの曲を混ぜて構成することが多いです。
どっちかに偏ると、全体として単調になってしますからです。
ということは、共演者を選ぶ際、イーブンしかできない奏者よりも、イーブン&スウィングどちらにも対応可能な奏者を選ぶのは当然ですよね?
どんな曲になったとしても、ノリを合わせてくれる人。
声がかかるのは、そういう”汎用性の高い奏者”です。
以上、スウィングできる弦楽器奏者がモテる理由をお話ししました。
では、スウィング慣れしていない弦楽器奏者がスウィングを会得するには、どうしたら良いのでしょうか。
弦楽器のためのスウィング習得方法「裏拍起点ボウイング」
裏拍起点ボウイングとは?
スラーの始まりを裏拍にすることです。こちらをご覧ください。
C.が「裏拍起点ボウイング」です。
スウィングの曲で、このボウイングを活用すると、ノリが生まれます。
なぜノリが生まれるのか?
裏拍が強調されるからです。
先述の通り、スウィングとは「前が長くて後ろが短い」リズムですが、
同時に「前が弱くて後ろが強い」リズムです。
この強弱の差がしっかり表現できると、スウィングのノリが生まれます。
弦楽器はめっちゃ有利
弦楽器以外の楽器(ピアノ、ギター、ベース、管楽器など)は、強弱の差を出すために指の微妙なチカラや息を吐く量を調整しなければならず、けっこう難しいです。
しかし、バイオリン、ヴィオラ、チェロなどの「擦弦楽器」となると話は違ってきます。
朗報です!擦弦楽器は、スウィングに向いてる楽器なんです!
というのも擦弦楽器の特性上、複数の音をスラーで繋げて弾く際に、自動的に「弾き始めの音」が強くなります。
つまり、ピアノや管楽器のように音の強弱などに気を使わずとも、この裏拍起点ボウイングにさえすれば、自動的に「表拍が弱く、裏拍が強く」なっちゃうんです。
裏拍起点ボウイングを練習に取り入れよう
音階練習や練習曲、実際の曲などなんでもいいです。ネタを準備してください。
今回はバイオリン奏者にはおなじみの曲でやってみました。
・スウィング脳に切り替える
・8分音符が出てきたら、裏拍スタートのスラーにし、裏拍起点ボウイングで弾いてみる
これを普段の練習に追加すれば、スウィングする感覚が体に染み付いていきます。
つまり、モテ街道まっしぐらです。
まとめ
・ポップスで何となくノリが合わないのは「スウィング」してないことが原因かも。
・弦楽器奏者がスウィングを会得すれば希少な存在になることができ、ポップス系の人との共演機会が増える。
・弦楽器は擦弦楽器なので、スウィングに向いている!是非普段の練習に取り入れて、頭ひとつ抜けてみましょう!